恋は突然現れる。
あまりに突然すぎて、慌ててしまう始末。
ここにもそんな、迷子が一人。
ああと、サンジは思った。
夕日がじわじわと海へ溶けていく。
不思議でもなんでもないと、その様子を眺めていた。
銜えている煙草を口から離し、溜息とともに煙を吐き出す。
そこは静かで、まるで一人きりなんじゃないか感じるほどだ。
煙草を銜え直す。
ちゃぷんと夕日が見えなくなれば、何色と呼ぶのか分からない空。
そこにある、いろんな色が交じり合って濁ると、夜の出来上がりだ。
光に目が眩んで、見えない振りをしていたものが見える時。
照らされることがなくて、大切なものを見失ってしまう時。
サンジは息苦しくなって、煙草の煙とともに大きく息を吐いた。
多分。自分はゾロが好きだ。
こんなことを言ったら、ゾロに失礼だろう。多分だなんて。
でも驚いているのだから仕方がない。
心臓が破裂しそうな程、跳ねているのだから。
こんなに苦しい思いをしているのだから、大目に見てやってくれと思う。
ドキドキとか、トキメクとか。
違うだろうと、自分に問いかけてみてもどうにもならない。
そうなっているのだから、そこからどうにかするしかない。
これからこそが、腕の見せ所だろう。
恋の試練、ラブコック。Mr.プリンス、サンジ。
恋愛Step-up☆Game
Step@ さりげなく見つめ、徐々に自らをアピールするべし。相手が話し掛けてくるようなら、アピールは成功したものと思へ。
風を受けるその緑色が、綺麗だなと思う。
遠くから見ていたら目が合った。嬉しい。
何?見つめちゃって。惚れちゃうよ。
・・・惚れるかアホ。先に見てたのお前だろ。
可愛くねぇ。お前、ムカつく。
お前に言われたくない。
ほんっと、ムカつくわ。その頭、思いっ切り蹴飛ばしてぇ。
お前には無理。
・・・マジでやる。
サンジとゾロの方程式。
会話=乱闘
乱闘×時間=魔女の鉄槌
魔女の鉄槌=静寂
No Clear
StepA 必ず隣を陣取るべし。パートナーとして、自分がいかに相応しいかを感じさせるべし。
ナミの鉄槌の後。
二人して船の縁に凭れ、座っていた。
話をするわけでもなく、何もしない。しかし、動こうとしなかった。サンジも。ゾロも。
隣に感じる気配がサンジは嬉しくて、未だ鉄槌に痛む頭を擦りながら目を細める。
そっと隣を窺う。
な、その頭、フワフワしてんのかなぁ。触りてぇなぁ。
触るな。寄るな。
いいじゃんよ。な。
やめろって。
・・・・。
・・・・。
・・・・。
・・・・黙んなよ・・・。
No Clear
StepB 触れる時は絹を扱う様に優しく、そっと触れるべし。決して、慌てるべからず。
二人でボンヤリ空を見上げていた。
煙草を吸おうと思って尻の横においていた手を動かすと、サンジはゾロに触れてしまう。
冷たい水を被ったかのように、体がビクンとなる。
何?
別に・・・。
今、ビクってなったろ?
別に・・・。
お前、意味不明。
んだとっ!おめぇが、んな所に手ぇ置くからだよっ!!触っちまったじゃねぇか!!
はぁ?なら、お前が俺の隣に座るなよ。
・・・。
・・・だから、黙るなって。
No Clear
StepC 近距離で目を合わせる場合、瞳の奥底を覗き込むように見つめるべし。そのまま近付き、接吻けるならばなおよい。
黙り込んだサンジに不安になったのか、ゾロは俯いたサンジの顔を覗き込む。
サンジはゆっくりと顔を上げる。
おい。サンジ?
・・・。
・・・。
・・・。
・・・何で、睨むの?
え?お前が先に睨んでんじゃねぇか。
・・・。
・・・え?違うのか?
No Clear
StepD 告白の言葉はストレートがよい。耳元で甘く、囁く様に伝えるべし。
鼻から大きく息を吸って。吐く。
眉間に皺を寄せ、ゾロを睨みつけるように見る。
ゾロ!
何?
・・・。
だから、何?
あの・・・。
何睨んでんだ?カルシウム不足か?
・・・す。
す?
・・・す!
す?!
・・・す、好き!!!・・・・かも。
・・・かも?
その時のゾロの顔を、サンジは一生忘れないだろう。
No Clear.
Loser Sanji.
Game over.
グランドラインってのは、何が起こるか分からない?
何が起こるか分からないのは、何処でだって一緒だ。
でなきゃ、考えられない。信じられない。
サンジはいつだって自分自身に問う。それでも、拭い去れない想いだ。
ゾロに恋し始めたのは、出逢った瞬間だった。
目を離す事が出来なかったからだ。きっと逃げられないと思ったからだ。
グランドラインに入るずっと前だ。
始めのころは、憧れなんだろうと思った。
強い視線の先にある夢とか、野望とか。
でも、どうもそれだけじゃないみたいで。
で、結局何だ?
あの・・・だから・・・。
はっきりしろよ。
俺、お前のことずっと!!
ずっと?
『サンジ〜!!!飯〜〜!!!』
・・・。
・・・。
お呼びだぞ。
・・・・・。
・・・泣くなよ。
ぐすん。
邪魔もありますとも。
なかなか上手くは行かないものです。
でもきっと、近いと思いますよ。
その手を、迷いに迷って繋いで下さい。ね。
恋の試練、自称・ラブコック。Mr.プリンス、サンジ。
恋は突然現れる。
あまりに突然すぎて、慌ててしまう始末。
我らがラブコックも、残念ながらお手上げです。
迷子のままですが、ゲームも二人だったら案外楽しいもんです。
end
4000hit!!!本当にありがとうございます!!!
お礼にと思ってますので、少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
何か情けないサンジ君ですが、遠くから笑いながら見てやってください。(笑)
ありがとうございます!!!はわわ〜☆☆☆ 帽子屋より