君の黄色い小鳥/13









僕は君が好き。僕は君が大好き。
君も僕が好き?そうなってくれると、嬉しいなぁ。嬉しいね。








「結局、人間のままなのね。」
洗濯物を干しているサンジの足元でナミがうんざりだわと言う。
「うん。神様、俺とゾロがいい子にしてたからご褒美かな。」
「面倒臭くなったんじゃないの。」
欠伸をしながら答えた。
「あの女。サンジ君、知ってたのね。」
「ロビンちゃんのこと?」
パンパンと、タオルの皺を伸ばす音が山彦している。
「そうよ。あの女も人間になれましたって口だったのね。」
しかも、犬!と、天敵意識を込めて言う。
ロビンは以前、ゾロの母親の飼い犬で、ゾロの母親もそれを知っていた。
その上でずっと一緒に居たと。
しかし、ゾロの母親が死んでしまって、もう人間であることも終わると思っていたがゾロのことが心残りで、今でも人間であり続けていられると言う。
随分と人間としての生活も長く、その間、人間として生活していけるように勉強したらしい。
今では弁護士だ。
流石は犬の脳みそだと思った。
それに比べて。
「あっ!これ一緒に洗っちゃダメなやつだっ!」
小さな鳥の脳みそでは、これ以上は望めまい。
赤いトレーナーはピンクになって、一緒に洗っていたタオルもピンクに染まった。
「ゾロ、ピンクも似合うよね。大丈夫だよね、ナミさん。」
「えーえー、そうね。お子様と小鳥さんにはピンクが一番。」
「違うよ。俺は黄色だよ。」
ほら、髪の毛も黄色なんだと、楽しげに触る。
こいつは一体何がそんなに楽しいのか。
「そういうのを人間は金髪っていうのよ。」
「ナミさんは物知りだなぁ。人間になっても大丈夫だね。」
まぁ、あんたより人間らしく生活出来る自信はあるわ。一応黙っといてやる。
言ったところで理解できないだろうと言うのが本音。
「もう、戻らないのかしら。」
「戻らない方が俺はいいな。」
洗濯物を干し終え、大きく背伸びした。サンジの身体は小鳥の頃と違い、長い手足で更に大きく見える。
「でも、暫くはこのままでいれるみたいだから。」
「楽天的ね。」
「それに。」
それに、ゾロは鳥でもいいと言ってくれた。鳥に戻っても、一緒に居てくれればいいと。
サンジは嬉しいを通り越した笑顔だ。
「何よ、気持ち悪い笑いね。」
「へへへ〜。」
パーと遠くで音がした。車のクラクション。
そういえば、今日ゾロは昼までだった。
洗濯籠を持って門へ迎えに行くサンジに、人間として見れば少し違和感を覚えるが、 ナミは微笑んで見つめて追う。
おかえりなさいと満面の笑みで迎えるサンジに、うっと詰まりながら俯いて。
ただいまと、小さな声で返事をする。
皆知ってる、それは照れているのを必死に隠そうとしているから。
たったそれだけでサンジはお祭騒ぎだ。手の付けようがない。
「大丈夫かしら、アレ。」
「あら、可愛いじゃない。」
運転席の窓から身体を少し出して、ロビンは笑っている。
「それに、彼は“いい者”らしいから。」
「いい者?」
そう、いい者。
何が可笑しいのか、ロビンはクスクス笑いながら、じゃあねと車を出した。
ナミはそれを見送って、視線を二人に戻す。
ゾロの言葉は相変わらず素っ気無いが、それでもちゃんと答えるようになった。
それに、後ろから見ても分かる位、耳元が赤い。
優しいゾロと、いい者サンジ。
「ホント、可愛いったらありゃしない。」
玄関の扉が閉まらない内に二人を追う。
家の中からは、卵を焼いた柔らかい香りがした。










「君の黄色い小鳥」end

お話を読んで下さった方、本当にありがとうございます。
お茶漬けの終わりみたいに、出来ればサラサラっといっちゃってください。
最後に、もう一度。
ミナトさん。サイト2周年、本当におめでとうございます。