君の黄色い小鳥/4










いつだってそう。君はホントを口にしない。
誰も分かってくれなくても、僕はきちんと分かりたい。








毎日磨いてワックスを塗っていると、自信を持って言えるほど黒光りしている車。
後ろの席に深く凭れ、ゾロはぼんやりと流れる景色を見ていた。
「学校はどう?楽しい?」
「普通。」
縁が紫のサングラスを掛けて運転するロビンは、ゾロの素っ気無い返答にも慣れている。
ふふと、笑っていた。
「先生はまだ気にしてるみたいね。」
「放っておきゃいいんだ。何かしようとするから変になる。」
「そうね、でも先生は何かしたいのね。悪い人ではないと思うけど。」
両親を一度に亡くしたゾロに、どう接していいのか分からずぎこちなく、しかしに気に掛けている先生を思い出す。
何で皆、放っておいてくれないのか。
ゾロの不機嫌は日に日に増すばかりだ。
黙ってしまったゾロをルームミラーで見て、ロビンは再び笑った。
車は大きく右に曲がり、山道を登り始める。
「彼とはどう?上手くいってるの?」
彼とは?とミラー越しに目を合わせる。
ああ、サンジのことだ。
「あいつ、何なの?何で俺と一緒に暮らしてるの?」
「前に言ったでしょ、アナタは未成年で保護者が必要なの。」
「ロビンじゃダメなのか?」
「私?この歳で子持ちになるわね。」
ゾロの言うことを冗談と受け取っているようで、クスクスと笑っている。
ロビンは、ゾロの母と昔からとても仲のいい友人らしい。
弁護士で父ともよく仕事の話をしているところを見ていた。
家もよく訪ねてきて、母と二人でよく話をしていた。
「ロビンは、いい者だ。」
「あら、嬉しい。じゃぁ、彼は?」
「あいつは・・・。」
サンジ。いつも何が楽しいのか、ニコニコ笑っていて、作る飯は美味い。
頭は悪そうだけど、雰囲気も嫌いじゃない。あの黄色い頭だって。
黄色い。黄色。
「私が彼を連れてきた時、皆が驚いていたわよね。」
当然だろう。突然現れた、全く繋がりのない男。
親戚一同、何を考えているとロビンを詰った。
「みんな反対して、あなたを連れて行こうとした時、久しぶりにあなたの声を聞いた気がしたわ。」

俺、この家から出たくない。

その瞬間、ロビンへと向かっていた矛先が、瞬時にゾロへと変わった。
「私ね、あの時とても嬉しくて動けなかったのよ。あなたから、そう言って貰えたことが。」
この家さえも亡くしたくない。
ロビンにとっての大切な場所は、ゾロにとっても大切な場所だったのだと分かって。
「あの時のこと、覚えてる?」
ゾロはミラー越しのロビンの視線から逃げるように、窓の外を見た。
灯りの少ない山道は、暗い。
こんな道を、よくサングラスをつけたまま走れるものだと、見当違いなことを思っていた。
あの時のことならよく覚えている。
自分以外が全部敵だと思った瞬間だ。
自分を否定する視線が、何十にも重なって。ゾロは潰れてしまうと思った瞬間だ。
ゾロの手を無理矢理引いて連れて行こうとした男を、紹介されたばかりの男が。
皆に否定されたばかりの男、サンジが。
それはそれは、気持ちいいくらい見事に。
蹴り飛ばした。










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ゾロには親戚がいたらしい。