君の黄色い小鳥/7
いてもいいって確認させて。好きでいていいって確認させて。
頭が悪いから分からないんだ。そんな僕が悪いんだ、ごめんね。
この家はどこもかしこも広い。
その広さを、家具が埋め尽くすほど家具もなく広いままだ。
広いキッチンでゾロの夕食後、食器を洗っているサンジの背中。
別に母親ってわけじゃないけど、大きくなったわよね。
ナミは前足に顎をのせ、ぼんやりと思った。
「大きくなったのは図体だけで、頭は鳥頭。」
「?ナミさん、ごめん。聞こえなかった。」
バシャバシャと水がはねる音が煩い。
ナミは、独り言よと言った。
夕食の時間も、ゾロは一言も喋らなかった。サンジ一人の一方通行な会話。
ゾロが答えないのなら、会話ですらない。
一体何が気に入らないのか、あのクソガキめ。
サンジがなぜゾロの傍にいたがるのか、ナミは理解に苦しむ。
それでも、理解したところでできる事は同じだと思う。
小さなお皿にミルクを入れて、洗い物を終えたサンジはナミの前に出した。
「あら、ありがとう。いいの?洗い物増えるわよ。」
「水仕事が好きなんだ。」
ニコニコ笑って言うサンジに、ナミはありがとうと、もう一度言った。
笑っていたサンジが、ふうと一つ大きな息を吐いた。
「今日も、ゾロは喋ってくれなかったよ。」
「いつものことだけどってやつ?」
自分に出来る事。それは、こうやってサンジの言葉を聞いてやること。
「うん。」
「サンジ君。頭悪いんだから、あんまり深く考えちゃダメよ。」
「うん。」
少しは否定しなさいと思う。
「俺、ゾロに嫌いって思われてても平気だよ。」
「平気なの?」
「淋しいけど。でも、平気。ただ・・・。」
「ただ?」
「嫌いって言われたら嫌だ。」
身体はでかいくせに、こういうところは変わらないのだろうと思う。
サンジは俯いてしまって、今にも泣き出しそうな声を絞り出している。
「だから今、何も喋ってくれいないのは淋しいけど、ちょっとほっとしてる。」
「そんなの嫌だわ。私、そんなの淋しいって思う。」
黙ってしまうサンジを見て、ナミは心底ゾロが憎い。
「俺、ゾロといたい。」
ポツリと。でも、それが一番叶えたいことなのだろうと思う。とても重く響いた。
「何で、何でサンジ君は、そんなにゾロといたいの?」
私知らないとサンジに言うと、驚いた顔が勢いよく起き上がってくる。
そのまま固まってしまった。
「何よ・・・。」
「ナミさん。ゾロは優しいんだよ。」
そんなこと聞いてねぇと、ナミはミルクをひっくり返した。
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サンジ←ボケ ナミ←ツッコミ
漫才?