時間差心中交響曲  #1







目覚めた時、一番居て欲しい人は居なかった。









「自殺だそうよ。」
ゾロはナミが何を言っているのか分からなかった。
「何が?」
「彼の死因。」
ますます分からない。
そんなゾロの様子を見て、ナミは哀しげな目を向ける。
「彼?誰のことだ?」
「・・・。」
ナミは答えない。嫌な目だとゾロは思った。
こんな目を、この女もするのかと思うと、苛立ってしかたがなかった。
ナミをじっと見ていたゾロは視線を外した。見ていたくなかったのだ。
「そういえば、あいつ何処行った?」
ふと思い出し、尋ねる。
今のこの空気を換えるのに、あいつを出したのは正解だと思った。
あいつの話になって、暗くなった例がない。
しかし、ナミはますます憐れなものを見るような目でゾロを見た。
何なんだよ・・・。居心地が悪い。
今の自分の状況を翌々見ると、今更ながらいつもの自分の部屋ではないことに気付く。
白い。消毒液の匂いがする。病院だ。
何故病院にいるのか?
何故あいつは居ないのか?
なぜナミは哀れんだように自分を見るのか?
急に疑問が湧いてくる。同時に恐怖も湧いてくる。
外していた視線をナミに向けなおす。
何かに怯えるような表情をしていただろうか。
ナミも恐れている。何を伝えることを?
「ナミ・・・。」
「ゾロ。・・・落ち着いて聞きなさい。」
ナミは静かに言う。少し声が震えているように聞こえる。
「彼は、サンジ君は死んだわ。」
窓の外は嫌なほど晴れていた。




俺はサンジとあの時一緒だった。
俺たちの住むマンションの屋上で、花火をあいつと見ていた。
確かその時、手を繋いだ。二人して見詰め合い、キスをした。
そして・・・・。
サンジは死んで、俺は倒れてるところを発見されたらしい。
キスしてからの記憶はない。
何故か覚えてない。