時間差心中交響曲 #2
ゾロは退院した。
どこも怪我は無かったが、検査を受けるために入院させられていたらしい。
サンジの葬儀は終わっていた。
結局、ゾロは出席できなかった。
サンジは死んだ。
警察は自殺だと言った。ナミも自殺だと言った。
だが、ゾロは信じられない。
一緒に暮らしていた。
笑い合い、触れ合い、キスもした。
幸せだった。
何処に自殺する理由があるのだと思った。
サンジの死の直前の記憶が自分から欠けていることを不自然に感じ、きっとサンジは誰かに殺されたのだと思った。
そのとき自分は頭かどこかを殴られて気絶していたのだ。
それなら合点が付く。
調べなければ、サンジを殺したヤツを見つけなければ。
ゾロは病院を出ると、サンジと暮らしていたマンションへ急いだ。
「ゾロ!!退院したのか?」
マンションの階段でルフィに会う。
ルフィは階段で近所の小さい子と遊んでいたようだ。
階段の上を見ると3人くらいだろうか居る。今日はウソップは一緒じゃないらしい。
「ああ、今さっきな。」
「そうか!今日、シャンクスが帰ってきたから、ご馳走なんだ。ゾロも飯食いに来い!!」
シャンクスはルフィの父親で、いつも仕事で海外に出ている。
ルフィは嬉しそうだ。久しぶりに父親に会うのだ、当然なのかもしれない。
ルフィの家はゾロの家の1階下になる。
サンジとまだ同棲してない時、よく夕飯をご馳走になっていた。
サンジと暮らすようになってからは一度も行ってない。
「わりぃ。今日はやらなきゃなんねぇことがあるから無理なんだ。ありがとな。また今度呼んでくれ。」
今は、サンジを殺した犯人を付き止めることの方が先決だ。
「じゃあな、ルフィ。親父さんにも宜しく言っといてくれ。」
そういうとゾロは3段飛ばしで階段を駆け上がる。
後ろからルフィの「おお。」と言う返事が聞こえてくる。
いつもより元気が無い。彼なりにゾロを心配しているのだろうか。
申し訳なく思ったが、サンジのことを考えるとすぐに忘れてしまった。
玄関のドアを開ける。
いつもふざけた様に『おかえり〜。』などと言ってくる男はもう居ない。
自分は一人になってしまった。
そう思うと、サンジを殺した犯人が憎くてたまらなくなった。
部屋に入る。
物持ちだったサンジのものばかりが目に付いた。
サンジの使っていた灰皿。サンジの使っていた時計。
ゾロはサンジが死んだことを今だ信じられなかった。
葬儀に出ていないせいだろうか。
サンジがよく立っていた、鏡の前に行く。
何の表情もない自分が映る。
少し前まで、あいつはココに居た。
ゾロの中に再び憎しみが湧いた。
必ず見つけ出してやる。
あいつを殺したことを、死ぬほど後悔させて殺してやる。
ゾロはサンジの使っていた携帯電話を手にした。
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