時間差心中交響曲  #3







携帯のメモリーに乗っている番号は思ったよりも少ない。
『俺、お前一筋だから、他は必要ないの。』
いつかサンジが言っていた言葉を思い出す。
メモリーは10件ほどしか入っていなかった。ゾロとの共通の友人と、バイト先の番号だ。
これでは、何の手がかりにもならない。
受信メールや着信履歴も調べたが、怪しいものは無かった。
他に何があるだろう。
ゾロはサンジの手帳を探した。
「何してるの?」
突然の声に勢いよく振り返る。
部屋のドアの前にはナミが立っていた。
部屋の散策に夢中になっていて、入ってきたのに気付かなかったらしい。
「お前か・・・。なんの様だ?」
「あのね、聞いてるのは私なんですけど。」
呆れたように言う。
「・・・別に、何もしてねぇよ。」
「この現状で、納得できる言葉じゃないこと分かってる?」
確かに・・・自分は今、サンジの部屋をひっくり返しているのだ。
「サンジ君。自殺じゃないって思ってるんでしょ?」
「・・・。」
「何か手がかりがないかと思って、サンジ君の部屋ひっくり返してるんでしょ?」
・・・参った。この女には敵わない。
「ああ。」
「私もね、少し不自然じゃないかって思うところがあるの。」
「っ!!」
思っても見ないところから情報が手に入りそうだ。この女の言う事は信用できる。
「サンジ君は屋上から飛び降りたってことになってるわよね?」
「・・・ああ。」
飛び降りたんじゃない。落とされたんだ。
「地面に落ちた時の状態がね。不自然だと思ったのよ。」
「何だよ。ハッキリ言えよ。」
ナミは少し考えるようにして言った。
「彼、仰向けだったのよ。」


ほら、やっぱりあいつは落ちたんじゃない、落とされたんだ。殺されたんだ。


ナミの言う事には、普通自殺したのなら身体は下を向いて落ちるだろうと言うこと。つまり、地面にうつ伏せた状態になる。
しかし、サンジは仰向けだった。これは正面からではなく、背中から落ちた事になる。
誰かに落とされた。そう考えるのが無難ではないか、と。
ナミは頭のいい女だ。
殺した人物の情報ではないが、これで確信した。
あいつは殺されたのだ。誰かに。
一体、誰が・・・。
そしてゾロの胸に再び黒い炎が灯る。渦巻くように。