時間差心中交響曲 #4
サンジのバイト先のレストランに行ってみる。
ナミは警察に知り合いがいるらしく、現場の写真をどうにか手に入らないか試してくれるらしい。
その間に、自分はできる事をする。
ゾロが思いついたのは、バイト先で何か無かったか聞く事だ。
我ながら、簡単なことしか思いつかないと思ったが、サンジは家以外では、ほぼバイト先で一日の時間を潰していた。
だから必ず何かあると思った。
「そういえば、女が会いに来てたな。」
ビンゴだ。
「黒髪の、背の高い女だ。」
「サンジのヤツ、少し困った風な感じだったな。」
その女だ。掴んだ。逃がすものか。
店の奴らによると、女は週に1度レストランに来るらしい。
しかし、今までサンジに会いに来ていたから、もう来ないかもしれない。
サンジは、死んだのだから。
その女がサンジを殺したのなら尚更来ないだろう。
それでも、ゾロは待ってみることにした。
このレストランしか、その女を繋げるものはないのだ。
店の外が暗くなり始めた。
待っていた女は来ない。
店は客が来始めたが、どれもカップルばかりだった。
女はいつも一人で来ていたと店の奴らは言った。
一人の客など居なかった。
黒髪の女が来たら連絡をくれと言い残して、ゾロはマンションに帰る事にする。
店を出ると、空には血の色の月が昇っていた。
気分が悪い。
マンションに帰る。
サンジの居ない部屋に帰る。
ゾロはルフィの誘いを断った事を少し後悔した。
階段を上り終え、自分の家のある階を突き当りまで歩く。
ドアを意識的に通り過ぎた。
突き当りから、サンジが落ちたという場所が見える。
そこには何も無い。血の跡も無い。
胸の辺りが静かになっていくのが分かった。
ゾロは、ゆっくりと、かつてサンジと暮らしていた場所へ戻った。
鍵は掛けていなかったので、扉は直開く。
部屋の中は暗いく、何かがいる気配も無い。
そこは自分が住んでいるとも思えない場所になっていた。
乱暴に靴を脱ぐ。
脚は勝手にサンジの部屋へ向いていた。
昼間に荒らしまわったサンジの部屋は、全くそのままの状態だ。
電気は点けていない。
点けたくなかった。
いつもと変わらないのに、たった一人の人間が居ないと言うだけで空っぽになってしまった部屋を目の前にするのが怖かった。
そのままベッドに倒れこむ。
「サンジ・・・。」
嗅ぎ慣れたサンジの匂いがすることに安心して、目を閉じた。
暗闇の向こうにサンジが笑って立っているように感じた。
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