時間差心中交響曲  #6







「相談を受けたわ。」
前々から受けていたとロビンは言った。
何の相談だと聞いたが、
「あなたには内緒でってことで相談を受けたのよ。」
そう言った。
怪しいと思っていた女の影はロビンだった。
ロビンがサンジを殺すわけがない。ロビンはサンジと自分を弟のように面倒を見てくれていたのだ。
また、振り出しに戻った。いや、元から進んでなどいなかったのだろう。
後は何ができるのだと考えながら、ゾロはマンションの近くの公園に行った。
サンジの居ないあの部屋に戻るのは嫌だった。





公園にはルフィが小さい子ども達と遊んでいる。
「よう、今日はよく会うな。」
疲れたようにゾロは言った。そういえば、昨日から飯を食ってないなとボンヤリ思った。
「ゾロ。サンジを殺したヤツ探してんだってな。」
鬼ごっこをしてるらしく、子どもは離れたところで走り回っている。
「何で知ってんだ?」
別に驚かなかった。
ルフィはどこかつかみ所の無いヤツだと思っていたので、知っていても不思議はないと思っていたのだろうか。
「ナミが、ゾロ居ないかって家に来た。」
「ああ。」
そういえば、携帯に着信があったような気がする。女の正体がロビンと分かって、気落ちしていてそのままだ。
「ゾロはサンジが殺されたと思ってるのか?」
ルフィがゾロの顔を見ないで言った。
視線を合わさない。それなのにいつになく真剣なルフィの態度に、ゾロは嘘は付くまいと思った。
「ああ。あいつが俺を残して死ぬはずねぇ。」
「ゾロはサンジが落ちた時一緒に居たんだよな。」
「??ああ。」
ルフィはどこか一点を見たまま視線を動かさない。
「ゾロ、サンジは自殺だ。俺が見た。」
ゾロは目を見開いた。
「もう、いいじゃねぇか。」
泣きそうな顔でルフィは初めてゾロと目を合わせた。











『俺が見た。』
ルフィのこの証言が、警察が「サンジは自殺だ。」と言った確証になったのだろう。
ゾロは呆然と思った。
サンジは自殺。
サンジは自分を残して死んだ。
悔しかった。
その程度でしかなかった自分が、自分は彼の特別だと思い込んでいた驕りが、許せなかった。
ルフィと話した後、何も考えられずにただ歩いていたらしいが、気が付けば自分の家に、サンジの部屋に戻っていた。
あいつが居なくても、例えそれが嫌で帰りたくないと望んでも、自分の帰る場所はここしかないのだな・・・。
そう思うと、空しくなってきた。
泣きたいと思ったが涙は出ない。
部屋には相変わらずサンジの匂いがする。
しかし、ゾロを安らかにしていたこの匂いも、いずれ近いうちに消えてしまう。
ゾロはサンジの使っていた枕を抱きしめた。
サンジを攻める気は起きなかった。できないと思った。